Interview 01 会社員から独立就農。自然とかかわる仕事を求めイチゴ生産者へ!
愛と感謝農園 高橋 俊文さん
ミガキイチゴアカデミー(以下、イチゴアカデミー)1期生で現在は宮城県山元町で営農されている≪愛と感謝農園 高橋俊文さん≫。
福島県相馬市の出身で、前職は工場の生産管理部門に勤める会社員でした。そんな環境から新規就農を求めてイチゴアカデミーへ入校。
現在は個人で独立して5期目を迎えています。そんな高橋さんにお話しをお伺いしました。
profile 【プロフィール】
- 2016年
- イチゴアカデミー1期生として入校
- 2018年7月
- 個人事業主として開業し、ミガキイチゴ認定ファーマーとして営農開始
- 2022年
- 現在、営農5年目
- 「愛と感謝農園」の名前の由来を教えてください。
- 「愛」と「感謝」というのは、僕の人生理念の土台・真ん中にある言葉です。この農園は家族や地権者さん、友人、地域の方々やGRA(イチゴアカデミーの運営会社)など縁ある方々に支えられて立ち上がった農園なので、「愛と感謝農園」という名前をつけました。
という表向きの理由の他にもう一つ理由があって(笑)音楽を聴くのが好きで、中でもSuperflyが一番好きなのですが、ファーストアルバムの中に「愛と感謝」という曲があって、そのタイトルからインスピレーションを受けたのがもう一つの理由です。なので、うちの農園のテーマソングはSuperflyの「愛と感謝」です!
- 俊文さんのお人柄がにじみ出た農園名ですね。そんな俊文さんはもともと会社員勤めだったそうですが、どういうきっかけで新規就農を考えられたんですか?
- もともと、新規就農を決めるよりも前に、前職の退職をせざるを得ない状況でした。前職はパソコン仕事が中心の会社員でしたが朝から晩まで働き詰めの毎日で非常に厳しい環境で、心身が壊れかけてしまっていることがわかったんです。
辞めるときは次に何をするか決めていなかったものの、「自然とかかわる仕事をしたいな」とは思っており、農業に関わる仕事にも興味をもっていました。
- そうだったんですね。GRAはどこでお知りになったんですか?
- 一番最初にGRAを知ったタイミングはSNSで見かけたミガキイチゴ・ムスー(注:ミガキイチゴのスパークリングワイン)という商品でした。もともと山元町にイチゴの会社があることは何となく知っていましたが、最近の農業ではこういったおしゃれな加工品も出しているのかと感心し、初めてGRAをきちんと認識しましたね。
その後、次の仕事をどうしようかと農業関連の講習やセミナーを聞いてみようかと調べている中で、GRAの岩佐社長の講演が福島市であるというのを知り、講演会に行ってみました。講演会の後には懇親会があったのですが、偶然僕の目の前に岩佐社長が座って(笑)そこで「農業にかかわる仕事をしたいんですよね」と話をしたら、「うちにジョインしてよ」と言われ、イチゴアカデミーに問い合わせたのが最初のきっかけです。
問い合わせをした後は、実際にGRAを訪問し、新規就農担当の方から説明を受けて研修受講に至ったという感じですね。
- 農業だと他の作物もあると思うのですが、イチゴを選んだ理由はありますか?
- そもそも農業ってどうやって始めるのか全くわからなかったんですよね。作り方や土地の取得方法もわからないですし。なので、どういう作物を作りたいというのは、あまり考えていませんでした。農業を始めたいと色々入り口を探している中でGRAと出会い、そのGRAが作っているのがイチゴだったという感じです。
- 作物は決められていなかったんですね!就農そのものへの迷いはありませんでしたか?
- 迷いはもちろんありましたし、できる自信もありませんでした。周りも最初はあまり賛成してくれていなかったです。GRAの新規就農担当者からの最初の説明でも、かなりリスクが大きい印象でした。元々無難な生き方しか選んでこなかったタイプなので、「こんなリスクを背負ってまでやるべきか」という不安はありました。
それでも年齢を考えると何かやるのはこれが最後のチャンスかなと思いましたし、人生で一度くらい自分のやってみたいと思ったことをやってみてもいいんじゃないかと思う気持ちが強く、就農を決意しました。
- 周りも賛成してくれていなかったとのことですが、ご家族の反応はどうでしたか?
- もちろん最初は反対されました。やはりイチゴ農家は初期投資がとても大きいので、「なんで借金してまでするのか?」という想いは当時の家族にはあったようです。それでも「やりたい」という想いをただひたすら伝え続けましたね。あとは、イチゴアカデミーの最初の説明で、簡易的な事業計画書は提示されていたので、それも見せながら家族には説明をしました。徐々に理解をしてもらった感じですね。
現在は両親ともに応援してくれており、営農開始直前のハウス建設の時は一部自主施工の部分があったんですが、その施工を手伝ってくれたり、1年目で人手が全然足りない時には手入れを手伝ってくれたりもしました。現在も父が資材の箱折り作業や、定植などの作業も手伝いに来てくれています。
やはりご家族の理解はとても重要ですね。
- 実際のイチゴアカデミーでの研修はいかがでしたか?
- 2年受講したのですが、1年目は何も分からずただ言われたままやっていくことがほとんどでした。2年目は1年目の経験があるので自分なりのアレンジを加えたり、経験値に磨きをかけていけるような感覚でした。2年やってよかったなと思っています。
栽培については「イチゴ農家は毎年1年生」と言われるぐらい毎年状況が違い、5シーズン目を迎えても思い通りにならないことが多いです。なので、少しでも多くのケースを経験できたことは有意義でした。
それに対して、選果※はこなす回数・量によってスピードや精度が大きく変わってくるので、2シーズンをきっちりできたのは本当に良かったと思います。
また同期の研修生とはとても良い時間を過ごせたと思います。1期生の頃はそれぞれがパイプハウスを1棟任されていたので栽培担当エリアは分かれていましたが、休憩時間や選果の時などは一緒に作業をしながら交流を深めました。研修時間外にも、他の研修生のお宅に招かれて一緒にご飯を食べたり麻雀をしたり(笑)時に仲良く、時に競い合いながら切磋琢磨していた感じですね。
※選果:イチゴを選別し、パック詰めする作業
イチゴアカデミー1期生終了式の写真。(左:GRA代表岩佐、右:高橋俊文さん)
- 現在は山元町で営農されていますが、この農地はどのように探されましたか?
- 実は、農地選びはかなり苦戦し、紆余曲折がありました。僕ら1期生の頃は、町のどの土地が空いているかという情報もまだまだ手探りの状態で、洋平さん※が一緒になって探してくれました。町の農業委員会へ行ったり、人脈伝いで地権者の方を紹介してもらったり、1件1件あたっていたので結構な時間がかかりましたね。
ようやく土地の目途が立ち、あとは地権者の方と最終合意を得る段階までいっていたのですが、契約寸前に「やっぱり売るのを辞めたいんだよね…」と言われてしまい、当初想定していた土地はダメになりました。さすがにその時は、「落ち込もう」って。落ち込むだけ落ち込んだら、切り替えようって思いました。半日だけ、落ち込みましたね。その後改めて農業委員会に行って、再度土地を紹介してくれませんか?と相談に行きました。次の日には「土地を見に行きましょう」と紹介してくれ、それが現在の土地でした。ここはもともと畑地で水はけも良い土地なので、結果的にとてもよかったと思っています。初めて地権者さんのお宅にご挨拶に伺った際、当時GRAで栽培顧問をしておられた橋元忠嗣さんに同行していただきました。地権者さんも、見ず知らずの人間に土地を貸すことは悩まれたそうですが、「忠嗣さんの下でやってる人なら」とご快諾いただきました。本当に土地選びにはいろいろな方の力をお借りしましたので感謝しています。地権者さんとは、今でもとても良い関係を築かせていただいていると感じています。
※橋元洋平:GRA副社長で山元町出身
俊文さんのイチゴハウス。広さは約25a
- その反面、やりがいなどはいかがでしょうか?
- すべて自分でやると決めて始めたことなので、やらされ感がなく、達成感しかありません!もちろん、疲れが溜まることもありますし、イチゴが思ったような出来にならなかったり病気が出たりすれば不安でいっぱいになることもあります。
でもイチゴって、お渡ししたほぼ100%の方が喜んでくださるんですよね。特に子供たちがもの凄く喜んでくれる。シンプルに「おいしい」という言葉もいただきますし、「今まで食べた中で一番おいしい!」と言っていただけることも多く、その瞬間は生産者になったんだな、生産者になれて良かったって感じる瞬間ですね。
俊文さんの日々の努力の賜物ですね。
- 営農後の働き方はいかがですか?
- 農業の、特に個人事業主って、何時までやっても誰にも何も言われないので一歩間違えるとブラックな働き方になりやすいんですよね。なので“メリハリ”をつけることが非常に大事だと思うんです。僕はもともと会社員だったので、どうしてもメリハリが欲しくて、繁忙期でも日曜日を固定で休みにしたり、収穫のサイクルによっては週の真ん中の水曜日は休みにすることも多いです。
朝は早いけど夜も早いので自分の時間も持てていて、前職時代に比べると「人間らしい生活」をできるようになったと思っています(笑)運動ではないけれど適度に体は動かせるし、規則正しい生活になるし、以前より健康的でいい生活だなと。
前の仕事をやっていたときは「60歳の定年前までに倒れるな…」と思っていましたが今は「100歳まで生きる!!」って思っています。
- 俊文さんは周りの方へ相談したり、頼るのがとてもお上手だなと感じています。
- 自分だけではできないことってたくさんあるんですよね。かつ、自分の持っていない知識を持っている人が周りにたくさんいるんです。GRAにも経営や栽培のスペシャリストがいるし、同じイチゴアカデミーで勉強して巣立ったファーマーにも、もともと経営者の方も沢山いらっしゃいます。そういった方に聞かない、頼らないのはもったいなさすぎると思うんですね。僕自身やっていく中でそれに気付きましたし、昔と比べて人の力を借りられるようになったと思います。なので、人の力を素直に借りるということはやっていく上ではとても大切だと思います。
- 営農する中で、GRAはどういう存在ですか?
- 一言でいうと“頼りになる存在“だと思っています。僕の就農1年目の状況と今の状況って全然違うと思っていて、GRAとはもう6年以上関わっていますが、これまでの研修生の経験を踏まえて色々と改善しながら一緒に作り上げてきている部分もあります。
僕はしょっちゅうGRAのオフィスにも顔を出して、様々な部署の方とコミュニケーションを取るようにしています。栽培で悩んでいることや、他のファーマーさんも含めた全体的なイチゴの状況など、雑談ベースで話をしながら情報共有をしています。困ったときに一番最初に相談するのはGRAの誰かなんですよね。近くにそういう存在がいるのは心強いと思っています。
ミガキファーマーとGRAとの懇親会にて
- 今後、愛と感謝農園さんで力を入れていきたいことは何ですか?
- 営農規模を広げるというよりも、まずは経営基盤をより強固にするために、収量を維持した上でしっかりと利益をとっていきたいと思っています。というのも、今年の6月にGRAの営業さんと昨シーズンの振り返りを行ったんですが、うちの選果基準が厳しすぎる可能性が発覚したんですよね。なので選果の基準を適正に把握して意識改革を行い、利益率を上げていきたいと思っています。また営業さんともコミュニケーションをとりながら、今のイチゴの市況感をしっかりとつかみ、商品を作っていきたいなと思っています。
- 最後に、新規就農を検討している方にメッセージをお願いします!
- 自分で“やる!”と決めること。決断するということですね。後ろを振り返らず、前に進む決意をもって欲しいと思います。
そして、「すべての責任は自分にある」と考えられるようになること。誰かのせい、何かのせいにするのではなく、自分がコントロールできることにフォーカスして行動することを大切にして欲しいです。
イチゴ栽培はハウス内でIoTを駆使して環境制御しますが、気候天候の影響を受けますし、色々教えてくれる人がたくさんいる反面、その人のいうことが正解かどうかは、数か月後の結果を見ないとわからないんです。「いや~今年は天気が悪かったから…、寒かったから…」「去年はこうしたらうまく行ったのに・・・」など色々言いたくなる気持ちもありますが、そういう点も踏まえて向き合っていくことが必要です。
また、ミガキイチゴの特徴は「IT×匠の技」です。ITの技術で色々と自動管理される部分も多く昔に比べてかなり楽にはなっていますが、“農業”はあくまで“農業”です。イチゴは本当に素直でやったことがそのまま返ってくると思っています。当たり前のことを特別に熱心に、しかも徹底的にやるという「凡事徹底」をできる人が上手くいく人だと思います。
自分で決めて「イチゴでこれから生計を立てていくんだ!」と、常にイチゴにとって最善のことを考え、手をかけられる人ならきっと成功できると思うので、ぜひそういう方に来てもらって、一緒にイチゴ業界を盛り上げていけたらと思います。
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